梵我一如

2019-10-13

君のはいた二酸化炭素は
僕も吸って僕の身体に取り込まれる

僕のはいた二酸化炭素は
君も吸って君の身体に取り込まれる

僕のなくなったじいちゃんばあちゃんは
火葬されて大気に混ざり
雨とともに降り注ぎ
昨日食べたお米に混ざっているかもしれない
今朝の朝食で君も食べたかもしれない

僕の書いた詩を読む君に
僕の思考が入り込む
君を意識して詩を書く僕に
君の思考が入り込む

僕は君と同じだ
君は僕と同じだ

僕の足元のありんこは
僕のこぼしたクッキーのかけらを食べたかもしれない

僕の足元のありんこの親せきが
畑で死んで肥料として野菜に取り込まれたかもしれない
その野菜を僕が食べたかもしれない

公園にいる鳩に
子供のころパンくずをあげたかもしれない

公園にいる鳩の先祖は
僕の先祖が狩猟して飢えをしのいだかもしれない

僕は彼らと一体だ
彼らは僕と一体だ

遠い昔ビッグバンが起きるとき
すべての物質は混ざりあった
僕と君とは混ざりあった
僕と太陽とは混ざり合った
僕と地球とは混ざり合った
僕と石ころとは混ざり合い
僕と宇宙とは混ざり合った

僕はみんなと混ざり合った

僕が生きているとき
足元のありんこも生きている
僕がたとえ死んだとしても
足元のありんこが生きていればそれでいいじゃないか
みんな一緒なんだ

そう思うと
生きていることがすごく軽くなって
うれしくなって楽になった

軽く軽く軽くなって楽になった

僕と君とは全く違う
君と僕とは全く違う

僕と君との関係は僕と君だけのもの
僕の思う君との関係は僕だけのもの
君の思う僕との関係は君だけのもの

僕と君とが同じ言葉を発しても
僕の言葉は僕の友達に響き
君の言葉は君の友達に届く
世の中に与える影響は全く違う

僕と君とが同じ言葉を発しても
僕の言葉には僕の経験が重なり
君の言葉には君の人生が宿る
込められた意味は全く違う

僕と君とは全く違う
君と僕とは全く違う

僕と君とが同じ仕事をしても
今ここにいる僕は僕の手に触れているものを作り
今そこにいる君は君の手に触れているものを作る
世の中に出す製品は全く別の人に届く

僕と君とが同じ仕事をしたら
僕の作ったものはあの人を助けるかもしれない
君の作ったものは別の人を喜ばせるかもしれない
僕と君との役割は重ならない

僕と君とは全く違う
君と僕とは全く違う

僕の今までしたことは
僕のこれからすることは
みんなみんな僕の一部
僕が僕である大切な一部

他の誰にも変われない
大切な僕の一部

そうして今のかけがえのなさを思い
生きている重みをうれしく感じた
生きている今がこの上なく喜ばしい

そうして僕の命は重く重く重くなった

僕たちは
みんな一緒の軽さの中で
みんな違う重みを感じて
その間を行き来しながら
バランスをとって生きている

生きているということは
一分を一秒を生きているということは
一分を一秒を死に向かっているということだ

生きているということは
死んでいくということだ

死んでいくということは
生きているということだ

宇宙と一体となった軽さの中で
この世に二つとない重みの中で

願わくば
僕の選んだ荷物を背負い
僕の選ばなかった重荷を手放し

時に君を支え
時に支えられ

あるいは食いしばり
あるいは笑顔で

生きてゆき
死んでゆく

宇宙と一体となって
ただ僕を生きてゆく
ただ君と生きてゆく

Posted by 佐伯真哉